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〈現場監督〉後藤昇さん・入江伸行さん

愛と情熱、的確な指示と気配りで現場を仕切る、名コンビ

《現場監督》
後藤昇さん/藤昇建設 会長(写真左)
入江伸行さん/藤昇建設 代表取締役(写真右)

まわりの人みんなを前向きな気持ちにさせる明るさと温かさをもつ後藤昇さん。抑えるべきポイントをしっかり抑え、円滑に施工が進むよう気を配る入江伸行さん。伊佐ホームズが現場監督をお願いしてるお二人は義理の親子、見事な名コンビです。

後藤さんは昭和17年生まれ、茨城日立の出身。先に上京した兄に誘われて、建具屋に弟子入りしたそうです。そこで親方の娘さんと大恋愛して結婚。昭和40年代アルミサッシが台頭するようになる頃に夜学で建築を勉強し、現場監督に転職します。住宅は建てれば売れる時代、建売住宅の仕事は順調でした。

昭和が終わる頃、当時の社長に独立を勧められて、藤昇建設を設立。自分の名前から二文字をとって会社名としました。それから間もなく、やはり開業して数年を経たばかりの伊佐ホームズと出会ったのです。

現在、施工中の家は、片流れの木造2階建て。「白と黒で構成したい」というお客様の希望で、屋根は黒、外壁は白になる予定です。

「伊佐さんは、加工場で小屋組を1回建ててからまたバラし現場に持ち込むような古来の本格的な仕事を手がけていて、俺もぜひそういうのをやってみたいと思ったんです。向上したい、やりがいのある仕事をしたいという気持ちがずっとありましたから。いいタイミングでしたね」

もともと仕事熱心な後藤さん、既に職人のネットワークを持っており、二級建築士の資格も取っていて、機は熟していました。

「建築の仕事は、作品として残る。家なんて、お客さんはたいへんな金額を出して一生に一度、建てられるかどうかでしょう。その思いに応えないといけないという使命感があるね。利益なんて度外視だよ。たまたまお金が入ったときはニコニコしてビフテキでも食えればいいなって、そんなもんですよ」

そして20年ほど前、さらなる幸運な転機が訪れます。娘さんのご主人、入江さんが一緒に働くようになったのです。入江さんは一級建築士で、もともと建設会社で構造設計に従事していましたが、会社の事情により退職。「建築のいろはを知ってるから、すぐに戦力になった」と、後藤さん。「いまは彼が頭脳担当、俺が肉体労働担当なの」。

一般に設計者が描く図面の多くは、間取りを示す平面図や空間の気積がわかる断面図、見た目がわかる建具図などです。現場では職人が施工しやすいように、建具と枠のおさまり、勾配のつけ方などを図面で指示する必要が出てきます。

2階の見上げ。構造材には秩父産のスギ材を使っています。

工場生産をベースにするハウスメーカーでは、既製の部品を組み合わせて簡単に住宅が完成しますが、自然素材中心で、すべてをオリジナルでつくる伊佐ホームズでは、こういった手間が欠かせません。原寸図や詳細図は、1棟あたり60枚ほど描くそうです。

実際の図面を見せていただきました。CADで描かれ、色付きで、注意点は大きな文字で明示してあります。「間違いを防ぐためには、とにかくわかりやすくしようと気を配ってます」と、入江さん。現場監督の仕事は、それまでのキャリアを生かすのにももってこいでした。

ときには設計担当者に構造やおさまりの提案をすることもあるといいます。この現場を担当する飯塚彬は、「入江さんは頼りになります」と感謝します。

じつは後藤さん、数年前にはご自身の病気と奥さまの急逝という悲しみに見舞われました。深い落胆の様子に伊佐ホームズスタッフも心配していましたが、見事仕事に復帰。最近ではご自宅を二所帯に改修、ワンちゃんを飼い始めたそうです。

「俺の人生、最高ですよ。脇目も振らず、前だけを見て今日があるんだから。最後まで現場でね、ああ、今日はいい天気だなーって死ねたらいいなあって思うんだよ」。後藤さんは笑顔で締めくくってくださいました。

—『伊佐通信』13号(2022年)より転載—