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髙木晃さん(漆造形家・多摩美術大学名誉教授)

多くのコレクションに
刺激されつつ
“未知の美”を日々、探求

多くのコレクションに
刺激されつつ
“未知の美”を日々、探求

髙木さんのお住まいは、親密感あふれる小さなミュージアムのようです。玄関には目の前に李朝の箪笥と壺、インドの古い木戸。窓辺に陶器やガラスの鳥が行儀よく並び、靴箱の上や頭上にも鳥のかたちをした工芸品がいくつも飾られています。

1点1点拝見しながらリビングに入れば、そこにはよりいっそうのコレクションが!
李朝の民画や英国の古いデコイ、アイアンや流木、陶器でつくられた鳥のオブジェ、世界各地の漆器……。もちろんご自身の作品も。どれもが独特の美しさを放ちながらも、ひとつの世界観をつくり出す様子には、思わず目を見開かされます。

李朝の家具やインドの扉を飾った玄関ホール。

2階への階段。髙木さんの漆作品が美しく映える。

リビング壁面の棚には多くのコレクションが。

「鳥は若いころから好きなんです。この民画にもカササギが描かれているでしょう?」と髙木さん。
「制作する上でも、ものを選ぶときでも、僕が求め続けるのは未知の美しさ。そういう美というのは、やはり自然の中にある。最近、特にそう感じます」

乾漆の鳳凰。「神輿の上に載っていたものだろうかと思っていたが、最初からこのようにつくってたらしい」と髙木さん。日本の江戸期のものと想定される。

玄関の窓にはガラスや陶器の小鳥たちが並ぶ。

流木でつくられた鳥は、現代の作家ものだとか。

80歳を超えた現在も、同時進行でさまざまな作品を制作中。

“漆象”(漆で表現するかたち)を主たるテーマに活躍する造形家・髙木さんが、ギャラリー櫟を訪ねてくださったのは9年あまり前です。2年後には『髙木晃 漆象展』を開催。そして昨年、ご自宅のリフォームを伊佐ホームズに依頼なさいました(2014年掲載時)
「中古で購入して30年以上住んできましたが、やはり自分の気に入った家が建てたい。それで半分だけつくり変えようと思ったんですよ」

屋久杉1枚板のテーブルを置いたリビングには、穏やかな空気感が漂う。モリシゲのソファは髙木さんのデザイン。

L字型の建物の平屋部分を2階建にし、1階は丹精された庭と一体感のあるリビング、2階は寝室と予備室に。無垢の木をふんだんに使った空間には、お手持ちのさまざまなコレクションも、それまで以上に映えるようになりました。

今は、制作にひと息つくと、好きなものに囲まれたリビングで、庭にやってくる小鳥たちを眺めたり、散歩で摘んだ野の花をちょっと活けたり。
「家にいて自然を間近に感じられるのがいいですよね」
そんなひとときが、また新たな創造へと結びついていきます。

ご自身で木や苔を植え、石を配置したという庭。

—『伊佐通信』3号(2014年)より転載—
※内容は掲載時のものです

髙木晃(たかぎ・あきらか)

1933年生まれ。東京芸術大学美術学部工芸科卒業。松田権六氏に師事。多摩美術大学助教授、教授を経て、同大学名誉教授。安宅賞、国井喜太郎産業工芸賞ほか受賞多数。
平成25年竣工「寄木張りの家」施主