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山下大輔さん

元プロ野球選手・監督、野球評論家
令和3年竣工「二世帯住宅で蘇る家」施主

元プロ野球選手・監督、野球評論家
令和3年竣工「二世帯住宅で蘇る家」施主

大切なのは、一人ひとりの長所を、適確に見極め、伸ばすこと。
遊撃手としての経験が今の私をつくりました。

ご両親の趣味を生かし改修したお住まいで

「大洋ホエールズ」という球団名に懐かしさを憶える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大洋ホエールズ時代に大活躍した選手であり、球団名が横浜ベイスターズになってからは監督も務めていたのが、今回お訪ねした山下大輔さんです。

伊佐ホームズにご依頼いただきご自宅を改修されたばかり。
「ものが多いんで、ゆっくり片付けている途中です」という中での訪問でした。

とはおっしゃるものの、個性的な外観を持つ3階建の玄関を入れば天井にガレ、応接間にはミューラーの照明。

重厚感のある室内はバロッサバレンティのヴィンテージ家具やウィリアム・モリスのカーテンに彩られ、その素敵さについついため息もこぼれます。すべて、改修前の家から引き継いだものです。

迎えてくれた大輔さん・佳子さんはとても気さくなご夫婦。
「機能的にも感覚的にもとてもすっきりとして、いい改修ができました」と声を揃えます。

大輔さんは静岡県清水市の生まれ。小学校低学年には、ソフトボールと地元で盛んなサッカー共に得意だったそうです。
「記憶のない小さい頃からいつも、ご飯を食べる時も左手にボールを持っていたらしいです。丸いものが好きだったんだな。今じゃ頭も丸いですけどね」
そんなジョークにもつい笑わされてしまいます。

サッカーと野球の両指導者から将来を期待されましたが、選んだのは野球。
4番ピッチャーやキャッチャーなどさまざまなポジションを経験し、慶応大学野球部で選択したのが遊撃手、いわゆるショートでした。

明るい光が入る、ゆったりとした2階のLDK。右手の壁面は造り付けの収納に。グレージュカラーは奥様の佳子さんのこだわりです。

周囲の一人ひとりを常にプロとして尊重すること

「遊撃手は守備の要。外野にも内野にも入って動き、キャッチャーからの牽制球も受けるし、遠くからファーストに球を投げる肩も必要。1〜3塁に比べると自分の“宿”がないんです。常に周囲に目を配って状況に対応する、フレキシビリティの大きいポジションです」

大学時代、その活躍と、端正な容姿から「慶応のプリンス」とも呼ばれた大輔さん。大洋ホエールズ入団でプロ選手になって意識が変わったそうです。

「好きでやっていたのとは違い、仕事になったわけです。ファンのためにもチームそのものが強くなければならない。その中で残っていくには、と。野手ですから打てば活字になりますが、自分はむしろ、得意な守備力を伸ばしていこうと考えました。それで出場機会も増え、経験を重ねていったんですよ」

試合中に処理する球数が格段に多く、まわりの選手との関わりも多いのが遊撃手。仲間や相手球団一人ひとりのクセや得手不得手も把握していなければなりません。それが引退後、指導者や解説者としての適確な視点につながりました。

「指導者に必要なのは、個々の選手の能力をいかに引き出すかということ。長所を見極めて伸ばすことでチーム力を上げる、その判断が大事なんですね。人間は一人ひとり違います。技術だけでなく体力や精神的な問題などもある。黙って見守り、本人が聞きたい時にひとことだけ言う場合もある。皆プロとして認められた人材なのだという敬意のうえで、一人ひとりの違いを理解していなければ」

その考え方は、野球界だけでなく、接するあらゆる人々に対する際の信条にもなっています。

「慶應のプリンス」と呼ばれていた頃。六大学ではリーグ3連覇を達成。4年時には主将を務めました。

左は巨人の長嶋茂雄氏。 山下さんはルーキー、長嶋氏は現役最後の年のオールスターゲームでの貴重なショットです。

ロサンゼルス・ドジャーズ監督を20年間務められたトミー・ラソーダさんとのツーショット。

互いにプロフェッショナルだから刺激を受けられる

お住まいは1987年に建てたものです。
当時は現役選手として多忙で、出身地・静岡県に住むご両親に任せ、ヤマハの家具デザイナーだった小田原健さんに設計を依頼。木の重厚な素材感を生かした地下1階・地上3階建になりました。

けれど近年は経年による修理が増加。また息子さん一家と同居し、引き継いで欲しい思いもあったといいます。
そんな時でした。慶應義塾大学体育会同窓会の折、自由が丘の街で同級生だった伊佐裕と出会ったのです。

「野球一筋の学生時代には交流はなかったんですが、仲間からいい仕事をしていると聞いて」
それが今回の改修にお声がけいただくきっかけとなりました。

設計担当の谷本繁彦がご提案したのは、断熱性向上とライフラインの改修、2世帯住宅への変更、地階から3階までのエレベータ設置などのご要望を受けてのリフォームプラン。
個性的な外観はそのまま。使われていた良質の建材なども、できるだけ生かしています。

「たくさん人が集まれる家になりそう」と佳子さん。
大輔さんも「全ての面でよい家になりました。伊佐さんや谷本さんと親しく交流する中、野球界しか知らない私には勉強になる話ばかり。今後もご一緒していろいろ教えていただければと」。

他分野の声も広く受け止め、尊重し、プロフェッショナルを貫いた方だからこその言葉。伊佐たちにもうれしいお誘いです。

現役時代はここで素振りなどもしていたという地階。今は資料映像を見たり原稿を書いたり。デスクはバロッサバレンティ。

—『伊佐通信』13号(2022年)より転載—

山下大輔(やました・だいすけ)
元プロ野球選手・監督、野球評論家

1952年生まれ。静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。清水東高校から一般入試で慶應義塾大学商学部へ進学。大学野球では「慶應のプリンス」と呼ばれた。1974年、ドラフト1位で大洋ホエールズに入団。8シーズン連続でダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデン・グラブ賞)受賞、遊撃手連続守備機会無失策のセ・リーグ記録、日本記録を樹立するなど、球界屈指の守備の名手として活躍。1988年、現役引退。横浜ベイスターズコーチおよび監督、新球団の東北楽天ゴールデンイーグルスのコーチ、DeNA二軍監督などを歴任。2009年にはロサンゼルス・ドジャース傘下のチーム「グレートレイクス・ルーンズ」の守備コーチとしてアメリカに渡る。2020年、BCリーグ神奈川フューチャードリームスのゼネラルマネージャーに就任(現在は退任)。TBSやNHKの解説者、雑誌「Number」や日本経済新聞の連載なども務める。愛称は「大ちゃん」。

伊佐ホームズ「春の集い(2023年)」ミニトークにご登場いただきました

ワールドベースボールクラシック(WBC)が終了したばかりのタイミング。WBC優勝の興奮冷めやらぬ中、伊佐とともに野球談義に花が咲きました。