25年前に伊佐ホームズで建てた母屋の隣に、独立した離れを増築しました。この離れは家族の生活の場だけではなく、隣接する施設を運営されるご主人の書斎として、また来客のおもてなしの場としても利用できます。
母屋で育った子どもたちは既に独立。現在はご夫妻ふたり住まいですが、食事をするダイニングテーブルがご主人の書斎になることがほとんど。気兼ねなく書類を広げられる場と、来客を迎える空間が必要だったのです。
離れと母屋のつながり
接する建物の日当たりと
プライバシーに配慮
敷地には余裕がありましたが、離れを建てるにあたっては北側の空地が選ばれました。母屋の日当たりを遮らず、出入りもしやすいためです。
北隣に建つマンションの日照も守れるよう、平屋建てに。お互いの視線が合わない窓の配置にするなど、プライバシー面にも配慮しています。
和のテイストで
母屋と統一感を持たせる
離れの間口は約4.7m。片流れ屋根で隣家の採光に配慮しながらも、和の佇まいと現代的なフォルムが溶け合う外観です。ダークブラウンの格子に縁取られた玄関と、内部の丸柱が透けて見えるコーナーの開口部が目を引きます。アプローチには車椅子が出入りできるスロープを設置。母屋と共通のデザインを踏襲することで、2つの建物に一体感が生まれました。
既存の植栽を活かして
エントランスポーチを新設
母屋の玄関前には竣工時に植えたモミジの木があり、四半世紀を経て伸びやかな枝が緑のアーチを描くまでに成長。この木陰を活かそうと、離れと母屋をつなぐ玄昌石貼りのエントランスポーチを新設しました。自然のシェードに守られたアウトドアリビングとして、お酒や食事を楽しむこともできます。紅葉や新緑の季節が以前にも増して待ち遠しくなりました。
離れのプラン
普段は書斎、来客時は
おもてなしができるサロンに
離れは細長いプラン。中央の水回りを挟んで西側にご主人の書斎、東側にはゲストルームがあります。約19畳の書斎は最高3.7mの天井高を持つ伸びやかな空間。来客時はおもてなし用のサロンにもなります。床材は床暖房対応のナラ無垢フローリング。天井にも無垢材がふんだんに使われています。壁は京聚楽の左官で仕上げ、穏やかな居心地のいい部屋になりました。
長さ3mの無垢板テーブルと椅子、ベンチのセットはご主人が購入されたもの。10人程度でもゆったりとくつろげます。窓際の吊り戸棚とカウンター収納は書類の保管場所で、北隣のマンションからの視線を遮る役目も。また、右奥に見える格子戸は母屋への出入り口です。
広いエントランスポーチと
母屋の眺めが広がる大型コーナー窓
天井まで開いた大型窓からは陽光が降り注ぎ、庭の木々が楽しめます。コーナー部分の先に広がるのは、モミジと同じ年月を経たヤマボウシの眺め。窓越しにエントランスポーチと母屋、隣接する施設とのつながりも感じられます。要望されたトップライトは部屋の奥まで光が届き、換気にも効果的。正面奥の玄関は広めの土間とし、庭仕事などを終えたご主人が休憩できるよう、ソファを置きました。ちょうど書斎と庭をつなぐ前室のような役割です。
活動的な書斎と静かな
ゲストルームの間に水回りを
来客用の食器などを入れる収納内部は、墨色と藍色に彩られています。これは並べたお酒のボトルが映えるように、との遊び心から。
書斎の奥は来客用シャワー室や洗面所などの水回り。さらに通路の突き当りにはゲストルームが用意されています。水回り上部の空間はロフト収納として無駄なく活用。
専用シャワー室を備えた
くつろぎのゲストルーム
東側の約11畳のゲストルーム。母屋のヒメシャラの眺めが楽しめる位置に大型窓を設けています。書斎と同様、床と天井には無垢材が使われていますが、こちらは壁に淡い色調の上品なクロスを貼り、ホテルライクな雰囲気に仕上げました。正面奥の壁にはベッド用のヘッドボードを設置。室内から直接シャワー室や洗面脱衣室にアクセスでき、ゲストがリラックスして過ごせます。
離れの完成後、ご主人は「思い切り書類を広げて仕事ができるようになった」と喜ばれています。遠方からの来客の宿泊も可能になりました。今回は母屋の新築時と同じ設計者が担当。長年にわたるご夫妻とのご縁に、また新たな1ページが加わりました。
建築データ
【所在地】東京都世田谷区
【工事期間】令和4年7月〜12月
【構造】木造平屋建て
【延床面積】66.94m² (20.25坪) ※離れの部分のみ
[令和5年7月撮影・取材]