第五回 第一期工事完了

写真:稲葉邸外観
稲葉邸外観

第一期工事完了!

「高野山 雲上の邸宅プロジェクト」が着工して早や半年。本覚院の敷地内で始まった工事は、本格的な寒さを迎えた12月、いよいよ住居部分が完成したことで第一期工事を終えました。外構工事は冬の間はできないので、完成は春になりますが、いよいよ建物に住み始めることができます。約2年半前に当社の駒沢住宅を訪れた稲葉氏に、さっそく住宅部分の完成の喜びと感想を聞いてみました。

〜新居が完成し、まずはその感想は?

「住居が年内に完成して非常にうれしく思っています。自分が想像していた以上の家が完成し、新しい日常のサイクルに期待しております。
もともと建築やインテリアデザインにとても興味があり、いろいろな雑誌やテレビで研究したり、どこか有名なホテルや旅館に泊まる機会があれば、建物や内装の写真を撮ったりして、個人的に情報を蓄積していました。実際に、自分が新住居の建築を任されてみると、今まで寺内で行われてきた建て替え、改修工事を眺めていたのとでは違い、自分が思い描いた「家」が、イメージ通りに完成するか、不安を抱いていたことも事実です。

写真:厨房前のホール
厨房前のホール(現在工事中)

実際に計画に入って感じたことは、自分が思い描く“理想の家”というのは建築雑誌の写真の切り貼りのようなもので、良いところばかり集めたリアリティーのないものでした。しかし、専門家と膝を詰めて話して行くことにより、一つ一つの物が実生活という「場」のなかで具体的に解決されて行きます。一つの物の形や色を決める場合でも「お寺であること」「多数の人が見ること」など公共性も考慮に入れると選択肢も変わってきます。自由なイメージの世界よりリアリティに満ちた現実と直面しながら詰めて行くほうが何百倍も楽しいですね。
また、実際の工事現場を見ていて「なぜこの木を使うのか?」などの素朴な質問も出てきます。それを大工さんに聞くことで、先人たちの深い知恵にも触れることができ、非常に貴重な体験ができたと思っています」

 
写真:角をまるくした外観の壁。
角をまるくした外観の壁。
家を“蔵”のイメージにしている

〜ご近所での評判は、何かありましたか?

「寺の門からこの新居は奥まっていて見えないため、うわさにはなっていても、まだ皆さんの想像のなかにあると思います。一般的に、私達のような世代が結婚、出産を伴う住居を建設するとなると、時間的にも、経済的にもかなり制約があると思います。その点、私の場合は恵まれていて、結婚前から、仕事とプライベートの両立を考えた建築が念頭にあり、間取りやデザインについて、かねがね構想を練っていました。実際、建設するにあたっての建築会社についてもしっかり吟味することができたので、地元の業者さんや大手の住宅メーカーにはない、哲学のある会社に巡り会えたと思っています。もちろん、経済的な面も含めて、このプロジェクトは両親の理解あっての話ですが。
完成した家については、家族も驚いており、周囲の皆さんは、まさかこんな家づくりのプロジェクトが進行しているとは、誰も予想していないでしょうね(笑)。」

〜高野山の僧侶という職務に良い影響がありそうですか?

「今まで暮らしていた家とは、明らかに“別の空間”が出来上がっており、仕事にも良い影響が出ると思っております。今までは、生活のほぼすべてをひと部屋で過ごしており、楽しむ、休む、くつろぐ、勉強するといったことを多数の家族やスタッフが出入りする環境の中で行っておりました。しかしこれからは、目的別、用途別にエリアがはっきり別れましたので、気持ちの切り替えが容易になると思います。聲明や書を練習する場合、今までは雑然とした居間で自らの集中力を頼りに行っていたことも、今度は、和の仕事部屋に座るだけで自然と集中力が増して行くことと思います。また、自分たち家族のスペースもあり、プライベートで安らぐ部屋もあります。設計士さんや大工さんには、私の描いていた漠然としたイメージを想像を越えた次元で『現実』に昇華させていただいたと思っています。」

写真:リビング
リビング。杉床のフローリングで、奥に暖炉が見える
  写真:リビングに隣接した和室
リビングに隣接した和室。
稲葉氏が集中してお経を唱える空間でもある
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〜本覚院は宿坊を兼ねたお寺であり、新居の中に大きな厨房を兼ね備えることになりましたが?

写真:宿坊の厨房。最大で100人分の精進料理を作ることができる
宿坊の厨房。最大で100人分の精進料理を作ることができる
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「すでに新しい厨房部分だけは使い始めており、働いているまかないの方々が以前とは違って、とても明るい雰囲気で仕事に励んでいます。そのいきいきとした姿を見て、本当に建て替えて良かったと実感しました」

〜ご家族の方々の感想は?

「実はまだ、だれも完成した部屋の中に入っていないんですね。私が進めている家づくりというプロジェクトに半信半疑というか・・・(笑)。でも、引渡しの今日を迎え、必ずみんな満足してくれるだろうと思っています」


稲葉氏の家族には、奥様も加わり、この新居を起点として、文字通り新しい生活が始まります。そして日本文化の根源ともいえる高野山で、本覚院という歴史ある寺を引き継ぎ、後世に残していくという大きな仕事を抱える稲葉氏の活躍に大いに期待したいものです。(了)

 
写真:今回中心となった棟梁の佐々木さん 写真 写真
今回中心となった棟梁の佐々木さん 年が明け、1〜3月は雪のため中断。総仕上げは今春4月になります
 

( 第六回 「入居後、半年経って」へ続く )

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