
いよいよ「高野山 雲上の邸宅」シリーズ、第三回目の報告です。今回は上棟式。旧家屋を取り壊し、更地だった稲葉邸も、夏の間に柱や梁などの基本構造が完成し、建物の骨格が現れ、期待がふくらみます。
稲葉邸の骨格を成す構造材の大きな特徴は、すべて小国杉を使用していること。この杉材は、九州の熊本と福岡の県境にある小国町が産地で、今回使用したのは「アヤスギ」と呼ばれている品種です。非常に良質で、台風などの災害にも強く、折れにくいことで有名です。
高野山の近辺では、吉野杉(産地:奈良県)が有名ですが、なぜこの小国杉を使うことになったのでしょうか。設計監理担当者はこう言います。


「初めは杉ではなく、ヒノキの使用を考えていました。ヒノキは通常、柱に使用します。しかし、梁にまで使用するとかなりの値段になってしまうことが難点。松を梁にすることも考えられますが、なかなか良いものが見つかりませんでした。そこで、思いついたのが小国杉。小国町は杉材の構造強度を数値で保証したり、地熱による乾燥技術への取り組み等、今後の地球環境を考えた先進の思想を持つ生産地で、材料の品質にも信頼がおけます。また、小国杉の産地と高野山の標高がほぼ同じで、育った環境が同じであれば、これに勝る材料はないと考えたわけです。さらに、小国杉の産地に行くと分かるのですが、一本一本の間隔が広く、日当たりが良いせいか、どの木も真っ直ぐに生えています。また、小枝が自ら落ちるため、節目が目立たず、化粧梁に使用しても美しいのです。私が家を新築するならば、迷わず小国杉を使いたいですね」
搬入された材木の質の高さに、施主の稲葉氏はもちろんのこと、設計担当者も大満足でした。

2008年7月30日、山上の真夏の暑さ、雲のほとんどない晴天のもと、上棟式を迎える日がやってきました。上棟式は、棟上げ(むねあげ)、建前(たてまえ)、建舞(たてまい)とも言われ、柱・棟・梁などの基本構造が完成して棟木を上げるときに行われます。昔からの風習にならい、現場の人々も、この式典を大事にしています。科学技術が飛躍的に発達した現代にこそ、心や精神の文化の高さが良い家を作る根本だと考えているからです。
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今回の稲葉邸の建築は、東京の施工会社である当社と大阪の大工さんとの初のコラボレーション。設計監理担当者によれば、「当社では、東京にはかなりの腕前を持つ職人さん抱えており、独自の指導をしています。設計コンセプトやディテールを理解してくれるかどうか、心配な点もありましたが、今回の大阪の職人さんたちも、仕事が早い上に、レベルが高く、棟梁をはじめとする各職人さんの仕事は充分納得のいくものでした。高野山という記念すべき仕事で非常に優れたスタッフに囲まれて仕事ができて良かったと思っています」とのこと。前日から急ピッチで進められてきた作業も夕方には棟上げまで完了。この晩は職人さんをねぎらい、ささやかな直会(なおらい)が行われました。
( 第四回「木完検査」へ続く )