番外編 施主・稲葉氏と対談

〜対談 高野山真言宗 本覚院 稲葉滋順氏×伊佐ホームズ代表 伊佐裕

「今後の観光地としての高野山について」

今夏、当社代表の伊佐裕が、施主である稲葉氏の入居後の様子をおうかがいすることを主な目的として、高野山・本覚院に赴きました。稲葉氏との会話は、新居の話にとどまらず、宿坊の経営のあり方、さらには、世界遺産にも登録された高野山の今後のあり方など、多方面にわたり、非常に楽しい会話となりました。

伊佐ホームズ代表 伊佐裕

(伊佐)本日は、こうして稲葉さんとお話しする機会ができてうれしく思います。寺院と住居を結ぶ工事が、寒さのため冬は中断し、春に再開したと思ったら、もう夏ですね。
さて今日は、今後の観光地としての高野山について、いろいろとお考えになっている稲葉さんのご意見をお聞きしたいと思っておりますが、まずは、その件で是非ご紹介したい人がいます。
それは、当社のお客様で、大学教授でありながら、日本の旅行業界のオピニオンリーダーとも言える方です。鎌倉のご自宅を建てさせていただいたのがご縁だったのですが、その方が各地で旅行に関するシンポジウムを行っており、地域の観光業などにもお詳しいようなので、是非、観光地としての高野山の今後を考えている稲葉さんとお引き合わせしたいと思っているのですが。

(稲葉氏)ええ、ぜひ良いお話が聞けると思いますので、お会いしてみたいと思いますが・・・。

(伊佐)じつはご紹介しようと思ったきっかけとして、私がその方にご相談している内容に、大分の湯布院の開発の話があるんですね。単に不動産として土地を売るのではなく、もう少し生活スタイルから変化を生じさせるような仕掛けを作ろうと思っているんですよ。まさにその方は、地域文化と経済を結びつけることを目的とした、経済産業省の街づくりに関する会議にも顔を出されていて。
面白いことに、建築士の顔も持っているのに、わざわざ当社にご依頼をいただいたんですよね(笑)。

高野山真言宗 本覚院 稲葉滋順氏

(稲葉氏)高野山のお寺の多くは、宿坊を経営しています。宿坊とは「参詣者の泊まる所」という意味ですが、単に観光の宿泊施設として利用される方や、本当に寺院という場所に体験宿泊してみたいた方など、様々な目的の方がいらっしゃいます。
私ども本覚院にも年間を通じて、多くの方々にご利用いただいておりますが、受け入れる私どもの態勢は、どちらかというと、宿泊施設としての機能に重点を置いた経営をしており、後者の、寺院という場所で何かを得て帰りたいと考える方には不満な点が残っているのではないかと危惧しています。
このことは、高野山の宿坊全体にいえることなのですが、私としては、世界遺産に登録されたということもあるので、わざわざ高野山を訪れ、宿坊を利用する方へは、住職がお迎えし、精進料理で接待しながら、何かお話を差し上げて、高野山という文化を堪能してお帰りいただきたいと思っております。

(伊佐)そういえば、本覚院はキリンビールとの縁が深いと聞きました。今回キリンビールとサントリーが合併することで、日本の食文化をより一層、世界に広めることになると思います。
そこで、たとえば精進料理をキリンと共同開発して、日本の文化を世界に広めるチャンスを築かれたらどうでしょうか。世界中からの観光客も増えたということで、いい機会だと思いますが。

(稲葉氏)それは、非常にユニークな発想ですね。いま、お客様にお出ししている精進料理は、以前から作りなれたものであり、正直なところ、新たなメニューの開発には着手しておりませんでした。もし可能であれば、是非チャレンジしてみたい案件ですね。
私も詳しくはないのですが、精進料理のひとつひとつには深い意味があると聞いています。そこで、そのような意味付けから共同開発できれば、非常に意義深い料理ができると期待できますね。

(伊佐)そして、ひと月ごとに新たな精進料理を1品でも発表できれば、いい話題づくりにもなると思いますが・・・。

(稲葉氏)まさにそうですね。
また、都会から来るお客様は、料理の中身はその土地由来のもの、味は都会のクオリティを求めていらっしゃいます。じつは高野山の町にもいくつかの食堂がありますが、都会から来る方々の舌を満足させるレベルとは思えません。店自体の数も少なく、奥の院を見た後に、一息つける店もほとんどないのが現状です。世界遺産登録で観光客は増えているのですが、やはり、高野山全体を総合的に考え直さなければならない時期に来ているんだと思いますね。

伊佐ホームズ代表 伊佐裕

(伊佐)じつは今、ひとつのプレゼンテーションを都内にある大手百貨店を持つ鉄道会社に対して行っているんですよ。それは、その鉄道会社が担っている、都市と農村を結ぶ役割を強く生かした内容です。具体的には、“農業を(土地の)文化にしよう”というテーマで、たとえばキッズガーデンを作って、都会の子どもたちが気軽に農業体験に行けるとか、その農地を通じて理科が学べるとか、いろいろな企画の提案ですね。農業には、人が学ぶ上で必要なことがたくさん詰まっているんですよ。
つまり、この提案の要点は、都心から離れた沿線の土地を単なる住宅地に変えていくのではなく、農業をひとつのテーマに、魅力ある街づくりを目指し、文化的価値を立体的にボリュームアップすることによって、不動産価値もが見直されていくという仕組みなんですよね。

(稲葉氏)それは、目からウロコですね。しかし、同時に高野山周囲の人々にとって耳の痛い話でもあります。
南海電鉄と高野山の観光業に従事する人々の間で、以前から何度も観光地として今後どうしていくかを考えてきました。しかし、やみくもな周辺の開発をするばかりで、人口が増えることもなく、状況がよくなったとは言い難いのです。
世界遺産に登録され、世界から注目されたにもかかわらず、観光に関する考え方は旧態依然のままですね。高野山というせっかくのネームバリューがあるのだから、何らかの手立てを考えていきたいと思います。

(伊佐)歴史のある場所だけに、今後のご苦労も多いでしょうね。

高野山真言宗 本覚院 稲葉滋順氏

(稲葉氏)ええ、これからの高野山を考えていく上で、一番大事なことであり、かつ大きなハードルは、主体となる我々お坊さんの“想像力&創造力の確保”なんだと思います。
お坊さんは、修行して鍛えられていますので、頭とカラダを使った総合力といいますか、日々の仕事を段取りよくこなすための俊敏性と持続力には長けているんですが、まったく新しいことへの発想力や創造力は、ほとんど経験したことがないんですよね。以前から、というよりも代々歴史的に、同じことを繰り返しており、そのための精神力は研ぎ澄まされているのですが、外の世界に目を向け、新たなことに興味を持ち、何かを創造していくということは苦手なんです。
だから、これからの高野山を“想像して創造していく”といったことが、一番大変でしょうね。

(伊佐)ぜひ、これからの高野山の発展を期待しています。そして、おそらく稲葉さんのような若い僧侶の方々が背負って立つのでしょうから・・・。
是非、冒頭にお話した方に会ってみてください。きっと良いヒントが見つかると思いますよ。

(稲葉氏)有難うございます。ぜひお会いすることを楽しみにしています。また、今後の高野山をよりよく発展させていくことは、難しいようですが、やりがいのあることでもあると感じています。
最近よく思うことなのですが、「思い続けていたら願いは叶う」。この言葉は本当ですよね。強い願いが運命を変えていくんですから。

(伊佐)そう、その強い願いと、あとはタイミング、つまり時期を見極めればいいと思うんですよ。 稲葉さんの今後のご活躍に期待しております。本日は有難うございました。

第一回「高野山について」 »
第二回「住居の計画」 »
第三回「上棟式」 »
第四回「木完検査」 »
第五回「第一期工事完了」 »
第六回「入居後、半年経って」 »